ナカニシ ダイスケ
NAKANISHI Daisuke 中西 大輔 所属 広島修道大学 健康科学部 職種 教授 |
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発表年月日 | 2016/06/25 |
発表テーマ | 文化を適応の観点から考える |
会議名 | 第24回広島社会心理学研究会 |
学会区分 | 国際的な研究会・シンポジウム等 |
発表形式 | 口頭(招待・特別) |
単独共同区分 | 単独 |
招待講演 | 招待講演 |
開催地名 | 広島大学 |
発表者・共同発表者 | 中西大輔 |
概要 | 文化を表現型がそのまま伝達される遺伝によらない伝達であると考えたとき (Boyd & Richerson, 1985)、それはヒトにどんなメリットあるいはデメリットをもたらしてきたと考えられるだろうか。個人にとって情報の不確実性を低減するという意味で文 化伝達の果たす役割は大きい (Kameda & Nakanishi, 2002)。また、文化伝達が行われる社会ではそうでない社会に比べて平均的な適応度が高くなることも示されている (Kameda & Nakanishi, 2003)。ヒト以外の動物には文化的伝統が存在しないという議論 (Galef, 1992) を踏まえるなら、ヒトの繁栄はこうした文化伝達の能力、心理学的に言うなら他者から学ぶという社会的学習の能力に支えられてきたのかもしれない。このように、社会的学習の能力は、何が正しい情報かを判断する上で有益とされてきた。一方、人類学者たちはこうした能力が情報獲得だけではなく、協力の文脈でもポジティブな効果−−つまり協力を促進するという意味での効果−−をもたらすと主張している (Boyd & Richerson, 2005)。文化的群淘汰の議論である。集団内の他者の行動を模倣する傾向が支配的になれば集団内の行動分散は減少し、逆に集団間の行動分散は拡大する。 このことは、協力的な集団ほど所属する成員の適応度が高くなるという集団淘汰の効果が文化 (正確にはそれをささえる社会的学習能力) の存在により支えられるということを意味する。本報告では発表者がこれまで行ってきた社会的学習及び文化的群淘汰に関する一連の研究を紹介し、文化の存在はヒトの適応とどのような関係にあるのか、考えた。 |