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ニッタ ユミコ
NITTA Yumiko 新田 由美子 所属 広島修道大学 健康科学部 職種 教授 |
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| 発表年月日 | 2025/08/24 |
| 発表テーマ | 特定外来生物ヌートリアに見られたマダニ寄生 |
| 会議名 | 第65回広島県獣医学術学会 |
| 主催者 | 広島県獣医師会 |
| 学会区分 | 地方学会 |
| 発表形式 | 口頭(一般) |
| 単独共同区分 | 共同 |
| 開催地名 | 広島市 |
| 発表者・共同発表者 | 新田由美子・三木由美子・原田俊英・石崎文子・山手丈至 |
| 概要 | ヌートリア(Myocastor coypus)は大型齧歯類で,広島広域都市圏の里地や里山に棲息する特定外来生物に指定される.レンコン圃場で獣害捕獲されたヌートリアにマダニ寄生を認めたので,ヌートリアの里地環境への適応状況とヒトへ人獣共通感染症のリザーバーとなるリスクについて発表する.岩国市の里地を研究対象の景観とした.当該市がヌートリアの捕獲強化策に参画している理由によった.捕獲場所は4地点(A, B, C, D)のレンコン圃場で,計49検体を譲り受けた.捕獲の場所と時期,検体の属性,剖検所見,病理組織学的所見および子宮内胎仔の計測値を評価指標として数値化し,統計学的解析に供した.消化管内容物の農薬(ネオニコチノイド系, 8種類)の濃度を質量分析計で測定した.外部寄生したマダニを形態学的に観察した.譲渡を受けた検体は2024年と2025年にそれぞれ12例と37例で,メスは20例(44.4%)であった.①メスのうち16例(80.0%)が妊娠し,妊娠個体あたりの着床数は5.7±3.2個であった.②D地点で捕獲された個体の耳介にマダニの寄生を認め(100%),寄生部位では真皮固有層にアレルギー性の炎症像が顕著であった.③消化管内容物に,農薬成分は検出されなかった(0.01ppm>).③マダニの寄生を認めた検体は5, 6月の時期にD地点で捕獲された.寄生していたマダニの形態は未〜緩慢吸血期にあるチマダニ属のそれに類似した.岩国市に棲息するヌートリアにマダニ寄生を認め,チマダニ属の形態を示した.被寄生ヌートリアの捕獲時期と捕獲場所は限定的であった.当該捕獲場所は里山と隣接する里地圃場で,ヌートリアと他種の野生動物との間でマダニの共有が可能であると推察された.ヌートリアが広島広域都市圏の景観環境に適応していることを,里地の圃場内あるいは周辺に棲息することと妊孕率の大きさで示すことができた.ヌートリアがヒトへの人獣共通感染症リザーバーとなるリスクの大きさはマダニの病原体保有率に依存する,と推測された. |