ニッタ ユミコ   NITTA Yumiko
  新田 由美子
   所属   広島修道大学  健康科学部
   職種   教授
発表年月日 2021/10/17
発表テーマ 獣害捕獲された野生動物の、年齢と環境有害物質の濃縮率との相関を推計する試み
会議名 令和3年度獣医学術中国地区学会
主催者 公益社団法人広島県獣医師会
学会区分 地方学会
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 共同
開催地名 広島市
発表者・共同発表者 新田由美子 三木由美子 谷浦督規 谷浦直美
概要 1. はじめに:日本獣医師会は「ヒトと動物が共存して生きる社会」を目指し,生物多様性保全の分野において野生動物の存在と社会的役割が重みを増している。里山を生息圏とする野生動物はヒトの生活圏との距離が近く,或いは一部を共有している。野生動物とヒトとは,共通の圃場作物を介し,この共有環境を内在化する。従って,野生動物の健康状態は,ヒトの公衆衛生環境を監視・調査する際に,貴重な情報を提供する。本研究では,害獣捕獲された中型野生動物の年齢を推計し,が生物濃縮する環境汚染物質の測定結果を用い (Nitta and Katoh, 2020),生物濃縮の時間依存性について考察する。2. 材料および方法:野生タヌキ16例を対象とした。頭蓋の骨格標本を作製し,デジタル式計測器で形態測定した。CT画像を撮影し,頭蓋各腔を測定した。全26変数の計測値を標準化し,主成分分析に供した。頭蓋の成熟度を示す変数の計測値を用いてクラスター分析し,16例の個体成熟度を序列化した。頭蓋計測による序列と環境汚染物質濃度による序列との相関を評価した。3. 成績:主成分分析で,1例に異なる頭蓋形態を認めた。哺乳動物頭蓋の出生後における発達・成長を示す指標である縫合線,鼓室包および歯に関する変数が,主成分への高い寄与率を示した。連続変数を用いた主成分分析で,3例が若齢獣クラスターに分類できた。名義変数を用いた主成分分析で,6例が熟齢獣クラスター分類できた。以上より,16例を若獣から成獣に至る3クラスターに序列化した。この序列の妥当性を,各タヌキが腎に蓄積したカドミウムと亜鉛量との相関で検証し,連続変数を用いた主成分分析における12例が高い相関を示した。4. 考察:野生動物の健康状態は棲息環境を反映し,人の公衆衛生環境の監視・調査へ貴重な情報を提供する。里山でヒトと共生する野生タヌキが腎にカドミウムを蓄積していたことから,この動物の成熟度を骨格計測法で序列化し,両者の関係を検討した。その結果,カドミウム生物濃縮における曝露期間依存性を認めた。哺乳動物頭蓋計測において,出生後の発達・成長を示す指標として,側頭骨の成長に伴う鼓室包の測定値に係る連続変数と縫合線の不明瞭化に係る尺度変数の重要性が示唆された。